ヨギボーイ(ヨギボーを操縦する少年)

夕刻、部屋の照明をオレンジ色にして、
ズズッと腰を下ろす。体が包まれる。
タイムトラベルができる操縦台だ。
空気清浄機がググーと音を立てる。
イヤフォンをギュギュっと両耳に装着する。
ノイズキャンセルできる完全ワイヤレスだ。
準備万端!はい、レッツラゴー!
数タップでスマホから音楽が溢れ出てくる。
今日は600km離れたあの場所に飛ぶ。
25年離れた紫の早朝のあの時間に飛ぶ。
グィーンと、一瞬の瞬間的に移動する。
鳥肌が立つ、そうだ僕は鳥だ。鳥なんだ。

過去に旅するキップをたくさん手にしてきた。
そんな過去に旅するキップの手に入れ方、
初めて聴く音楽の、その初めの違和感を越えること。
その初めの違和感の超え方は、今でも慣れていない。
今聞く音楽の違和感を超えて自分の一部になる時、
過去を旅するキップを手にしている。
それに気づくのは、その時から少し経ってからのことだ。
そのためにも、未来の自分のためにも、
今日も音楽の違和感に耳を傾けている。